こんにちは。
千葉市幕張のサックス教室「Coccole音楽教室」
代表のサックス講師、鈴木博子です。
今回は、演奏の土台となる「呼吸」について、掘り下げていきたいと思います。
正しい呼吸が出来るようになると、演奏に余裕が出てきて自分の理想とする表現が出来るようになるので、結果的に表現力がアップします。
多くの人が「深く息を吸い込む」ことに苦労していますが、それはもしかすると、呼吸の「本当の仕組み」を少し勘違いしているからかもしれません。
呼吸の主役は「肺」ではない?
「息を吸う」という行為を、私たちは「肺に空気を入れよう」と意識しがちです。しかし、実は肺そのものには筋肉がありません。肺が自力で膨らむことはできないのです。では、どうやって空気は私たちの身体の中に入ってくるのでしょうか?
答えは、横隔膜と肋骨の動きにあります。
この二つが呼吸の主役です。息を吸うとき、ドーム型の横隔膜は平らになりながら下へ下がり、同時に肋骨の間の筋肉が働き、胸郭(肋骨で囲まれた空間)が風船のように外側や前後に広がります。この動きによって、肺のスペースが広がり、外の空気との間に気圧差が生まれます。すると、空気は自然に、そしてスムーズに身体の中へ流れ込んできます。
肋骨と横隔膜を意識する
この仕組みを理解すると、サックス演奏に最適な呼吸が、よりクリアに見えてきます。横隔膜と肋骨を最大限に活用し、身体全体で深く、そして効率的に呼吸を行う方法です。
- 横隔膜の動き: 息を吸う際に横隔膜がしっかりと下がることで、肺は縦方向に大きく広がり、深い呼吸が可能になります。この動きは、お腹が膨らむ感覚として感じられます。
- 肋骨の動き: 肋骨が横方向や前後に広がることで、肺はさらに大きな容量を確保できます。この動きは、胸が広がる感覚として感じられます。
この縦方向(腹式呼吸)と横方向(胸式呼吸)の動きを連動させることで、肺の容量を最大限に引き出し、サックスを演奏する上で必要な安定したブレス(息)を生み出します。
なぜ「肩が上がる呼吸」はダメなのか?
多くの方が陥りがちなのが、息を吸うときに肩を上げてしまう癖です。これは、横隔膜や肋骨を十分に動かせない代わりに、肩の筋肉を使って無理やり胸郭を引き上げようとする動きです。この呼吸には、サックス演奏にとって致命的なデメリットがあります。
- 浅い呼吸: 肩を上げて行う呼吸は、胸の上部だけで行われるため、肺の奥まで空気が届かず、息の量が不足します。これにより、音量が小さくなったり、音が不安定になったりします。
- 不必要な緊張: 肩や首に力が入ると、上半身全体が硬直します。この緊張は、楽器を構える姿勢を不安定にし、指の動きをぎこちなくさせます。また、リードをくわえる口の周りの筋肉にも影響を与え、音色を硬くしてしまう原因にもなります。
- スタミナの低下: 浅い呼吸では、身体に酸素が十分に行き渡らず、すぐに息切れしてしまいます。特に長いフレーズを演奏する際に、スタミナ不足を感じやすくなります。
今すぐできる!身体が教えてくれる呼吸レッスン
この感覚を掴むために、次の簡単なワークを試してみましょう。
- 仰向けになってみる: 床に仰向けに寝て、身体の力を抜きます。お腹と胸に意識を向けると、呼吸のたびにお腹が膨らみ、肋骨が広がり、そして元の位置に戻るという、自然な動きを感じられるはずです。これが、あなたの身体が本来持っている「最も効率の良い呼吸」です。
- 息を「吐き切る」ことに集中: 次に、深く息を吸おうとするのではなく、まずはお腹や胸の力を抜きながら、ゆっくりと息を最後まで吐き切ってみましょう。吐き切った後、身体は自然に、そしてスムーズに次の息を吸い込もうとします。
- 座った姿勢で確認: 楽器を構えるように座った状態でも、この動きを意識します。背筋を伸ばし、首や肩の力を抜いて、肋骨が横に広がり、横隔膜が下がる感覚を掴んでみましょう。このとき、肩が上がらないように注意してください。
これらの練習を通じて、身体の本来持つ呼吸の仕組みに気づき、不必要な緊張を手放すことで、あなたのサックス演奏は劇的に変わるはずです。
レッスンでは呼吸に関する話も定期的にお伝えしています。呼吸を制してより表現力を身に付けたいという方は、是非体験レッスンからお受けください。
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